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スタートアップ業界解説
第1回:スタートアップとは?ベンチャーとの違いや意味・特徴・成功の秘訣を徹底解説
2025.03.07

ENEOS CVC Journal
近年、世界中で注目を集める「スタートアップ」という言葉。しかし、その本質や「ベンチャー企業」との違いについては、意外と知られていない部分も多いのではないでしょうか?
「スタートアップ」は単なる小規模な新興企業を指すのではなく、独自のビジネスモデルやテクノロジーで市場を切り開き、大きな成長を目指す特別な企業形態を指すことが多いです。
この記事では、スタートアップの定義や特徴、ベンチャー企業との違いを分かりやすく解説します。また、スタートアップが成功するための秘訣や注目すべき事例もご紹介いたします。これから起業を目指す方はもちろん、大企業でスタートアップ投資を担当されている方、スタートアップ企業に興味がある方にも役立つ情報満載です。
スタートアップの主な特徴とは
1. 革新性と市場創造
スタートアップ企業の最大の特徴は、革新的なアイデアと先進的な技術を活用した新市場の創造にあります。経済産業省の定義によれば、スタートアップとは「新しいビジネスモデルを考えて、新たな市場を開拓し、社会に新しい価値を提供したり、社会に貢献することによって事業の価値を短期間で飛躍的に高め、株式上場や事業売却を目指す企業や組織のこと」とされています。
他に類を見ないビジネスモデルで市場に参入し、短期間で圧倒的なシェアの獲得を目指すことが特徴です。その成長曲線は「Jカーブ」と呼ばれる急激な上昇を描き、企業価値を飛躍的に高めることを目標としています。
また、単なる事業拡大にとどまらず、イノベーションを通じた社会貢献を重視している点も、スタートアップ企業の重要な特徴です。この革新性と将来性の高さが、ベンチャーキャピタルなどからの投資を呼び込む要因となっています。
参考:経済産業省、平成31年2月,「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム 整備促進に関する調査事業報告書」
<スタートアップ関連用語紹介:ベンチャーキャピタルとは>
将来性のあるスタートアップ企業等未上場の企業に対して投資を行う会社です(ファンド体制をとることが多い)。ベンチャーキャピタルは単に資金を提供するだけでなく、投資先企業の経営に対する支援や、必要な人脈を紹介するなどネットワーキングの役割も果たします。最終的には、投資先企業が成長した際の株式売却で利益を得ることを目指しています。
2. 短期間での高い成長志向
スタートアップ企業は、従来のビジネスモデルとは異なり、短期間での急速な成長を特徴としています。ビジネスモデルを市場で素早く検証し、成功の可能性が見えた段階で大規模な事業展開を進めていきます。
この急成長を実現するためには、組織体制や事業戦略を市場の変化に合わせて柔軟に進化させる必要があります。競争環境の変化に迅速に対応しながら、持続的な成長を実現することが求められます。
資金調達においても、事業の成長フェーズに応じた戦略的なアプローチを取り、成長のスピードを維持しながら、企業価値の最大化を図っていきます。
3. 資金調達の重要性
スタートアップにとって、適切な資金調達は事業成功の鍵を握る重要な要素です。成長ステージに応じて、複数の資金調達手段を戦略的に活用することが求められます
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資が、スタートアップ企業の資金調達として主要な選択肢で、投資家は資金提供だけでなく、経営支援も行ってくれる重要なパートナーとなります。
また、そのほかの手段として金融機関からの融資もあります。近年は個人保証を不要とする融資制度も増えており、スタートアップの資金調達のハードルは以前より下がっている傾向です。
さらに、最近ではクラウドファンディングを活用する企業も増加しており、寄付型や株式投資型など、事業の性質に合わせて様々な手法を選択できます。このように、多様な資金調達手段を組み合わせることで、持続的な成長を実現することが可能となります。
<スタートアップ関連用語紹介:エンジェル投資家とは>
会社を立ち上げたばかりの時期に、主に個人として自己資金を用いてスタートアップ企業にお金を出してくれる投資家のこと。経験豊富な経営者や成功者が多く、アドバイスをもらえることも大きな魅力です。
4. 明確な出口(イグジット)戦略
スタートアップにおける出口戦略(イグジット)とは、創業者や投資家が投資資金を回収する手段を計画することです。主な選択肢としては、株式上場(IPO)や他企業への売却(M&A)が挙げられます。
IPOは、証券市場に株式を公開することで企業価値を最大化し、資金調達の幅を広げる手法です。一方、M&Aは大手企業などへの事業売却を通じて、経営資源の効率的な活用と事業の急速な拡大を図る戦略となります。
出口戦略は単なる資金回収の手段ではなく、企業の成長戦略と密接に関連しています。創業初期から明確な出口戦略を持つことで、投資家との円滑な関係構築が可能となり、また事業展開における意思決定の指針としても機能します。成功するスタートアップの多くは、事業の成長段階に応じて柔軟に出口戦略を見直しながら、企業価値の最大化を目指しています。
スタートアップとベンチャー企業との違いとは

スタートアップとベンチャー企業の事業形態には、以下のような違いがあります。両者は新しいビジネスを創造する点では共通していますが、その目指す方向性や戦略には明確な特徴があります。
スケールの仕方の違い
ベンチャー企業は、既存のビジネスモデルを基盤として段階的な成長を目指します。比較的安定した収益構造を確立しながら、着実な事業拡大を図る特徴があります。
一方、スタートアップはJカーブとよばれる急激な成長を目指します。初期段階では赤字が続くことが多いですが、市場での認知度が高まれば爆発的な成長を実現する可能性があります。このような成長曲線の違いは、両者のビジネスモデルの本質的な違いを反映しています。
事業モデルの革新性の違い
ベンチャー企業は「持続的イノベーション」を特徴とし、既存の事業モデルに独自の工夫や改善を加えることで価値を創出します。例えば、既存のサービスの効率化や品質向上などが該当します。
スタートアップは「破壊的イノベーション」を追求し、これまでになかった全く新しい価値提案や市場創造を目指します。従来の常識や枠組みにとらわれない革新的な技術の開発、ビジネスモデルの構築が特徴です。
リスクの取り方の違い
ベンチャー企業は比較的リスクを抑えた経営戦略をとることが多く、既存市場での実績やデータを基に、計画的なリスクマネジメントを行いながら事業を展開する特徴があります。
スタートアップは大きなリスクを取ることを厭わず、市場が未確立な領域に積極的に挑戦し、失敗を恐れない姿勢で新規性の高い事業に取り組むことが多い傾向があります。このため、成功時の報酬は大きい一方で、失敗のリスクも相応に高くなります。
資金調達方法の違い
資金調達においても、両者は異なるアプローチと特徴を持っています。
ベンチャー企業
銀行融資や公的支援制度など、従来型の資金調達手段を活用する傾向にあります。財務基盤の安定性を重視し、以下のような特徴が見られます
資金調達の特徴:
● 事業計画の実現可能性や収益性を重視した融資審査
● 政府系金融機関や地方自治体による各種支援制度の活用
● 事業の成長段階に応じた段階的な資金調達
● 借入金による資金調達が中心となるため、株主構成への影響が少ない
● 取引先や事業パートナーからの出資など、事業シナジーを意識した資金調達も実施
スタートアップ
成長速度を重視し、ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルからのエクイティファイナンスによる大規模な資金調達を行うことが多く、以下のような特徴があります。
資金調達の特徴:
● シリーズA、B、Cなど、成長段階に応じた大規模な資金調達ラウンドを実施
● 株式の希薄化を伴う代わりに、大規模な資金調達が可能
● 投資家からの経営支援や事業展開支援なども期待できる
● 事業の急成長に必要な先行投資(人材採用、研究開発、マーケティング)に充当
● クラウドファンディングやSTOなど、新しい資金調達手法も積極的に活用
両者の資金調達手法の違いは、事業モデルや成長戦略の違いを反映したものといえます。近年では、それぞれの特徴を組み合わせたハイブリッドな資金調達戦略を採用する企業も増加しています。重要なのは、企業の成長段階や事業特性に応じて、最適な資金調達手段を選択することです。
<スタートアップ関連用語紹介:コーポレートベンチャーキャピタルとは>
大手企業が新しい技術やビジネスモデルを取り入れるために設立するスタートアップ投資部門。資金の提供に加えて、大手企業が持つノウハウや販売網等のリソースを活用できる点が特徴です。
出口(イグジット)戦略の違い
将来的な成長戦略においても、両者には傾向の違いが見られます。スタートアップは、株式上場(IPO)もしくは、革新的な技術やビジネスモデルを評価した大手企業によるM&Aを重要な選択肢として位置づけていることが多いです。一方、ベンチャー企業の出口戦略は事業特性や市場環境によって多様化しており、株式上場(IPO)やM&A以外にも、事業承継など複数の選択肢の中から最適な成長戦略を選択します。
これらの違いは、両者の事業特性や目指す方向性を反映したものであり、どちらが優れているというものではありません。創業者の理念や事業の性質に応じて、適切な形態を選択することが重要です。また、近年ではこれらの境界線が曖昧になりつつあり、両者の特徴を併せ持つ企業も増えています。
日本と海外のスタートアップ事例
成功した海外スタートアップ事例
SpaceX: 宇宙ビジネスの新時代を創出
SpaceXは2002年にイーロン・マスクによって設立された革新的な宇宙開発企業。宇宙輸送コストを大幅に削減することを目的とし、再利用可能なロケット技術を開発しました。その成果として、NASAの統計によると2023年までに180回以上のロケット打ち上げを成功させ、そのうち90%以上の打ち上げで再利用技術を活用しています。この技術革新によって、従来の打ち上げコストを約10分の1に削減することが可能になりました。これにより、宇宙技術の民間利用を推進し、宇宙ビジネスの新たな地平を切り開いています。SpaceXは、その革新性と実績により、宇宙産業全体に大きな影響を与える存在となっています。
YouTube: デジタルメディアの巨人
YouTubeは2005年に設立されました。ユーザーが動画をアップロードし、視聴し、共有するためのプラットフォームとしてスタートしたこの企業は、独自のコンテンツから教育、ビジネス、エンターテイメントまで多岐に渡る動画を提供しています。2006年にGoogleにより約16.5億ドルで買収され、動画コンテンツの分野を強化しました。これにより、YouTubeはクリエイターに収益機会を提供し、多くのYouTubeスターを生み出しました。情報の民主化を促進し、教育的コンテンツを通じて学習と文化の拡大を支え、社会に広範な影響を与える存在となっています。
日本のスタートアップ事例
メルカリ:C to Cプラットフォームでの成功
メルカリは2013年に設立された日本初のフリマアプリ企業です。スマートフォンを通じて手軽に個人間で商品を売買できるプラットフォームを提供し、その使いやすさと迅速な取引が特徴です。2018年にIPOを通じて約13億ドルを調達しました。この上場により、さらなる事業拡大や技術開発のための資金を確保することができました。メルカリは、資源の循環型経済を推進し、持続可能な社会への貢献を目指しています。
このように、国内外で様々な分野のスタートアップが革新的なサービスや技術を生み出し、新しい市場を創造している様子が見られます。これらの企業は単にサービスを提供するだけでなく、社会課題の解決や新しい価値の創造に取り組んでいる傾向にあるようです。さらに、GoogleがYouTubeを買収したように、大企業が自社事業と親和性の高いスタートアップを買収することで、高い成長性を維持し続けるような動きも見られます。
スタートアップへの投資・協業を通じて事業創造を行うENEOS CVC
スタートアップは、社会に新しい価値をもたらす重要な存在として世界中で注目を集めています。日本市場においても、様々な社会課題の解決や新しいビジネスモデルの創出など、大きな成長機会が存在しています。
ENEOSグループはこのような新たな可能性に挑戦するスタートアップの皆様と、ENEOSグループの理念に掲げる「社会の発展と活力のある未来づくり」をオープンイノベーションにより実現するため、2019年にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立しました。
設立から現在(2025年1月末時点)に至るまで約180億円の出資実績を持ち、現在もスタートアップの皆様と共に未来を創造するべく、オープンイノベーションに取り組んでいます。これまでの活動実績については本ウェブサイト内をご覧ください。
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