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スタートアップ業界解説

第2回:CVCってなに?CVCについて徹底解説 今さら聞けないCVCの意味とは?企業のオープンイノベーションご担当者の方必見!初心者でもわかりやすく解説

2025.04.03

ENEOS CVC Journal

近年注目を集めている「CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)」。事業会社が革新的な技術やビジネスモデルを取り込む手段として、スタートアップへの投資を行うために、CVCを設立するケースが増えています。

本記事では、CVCの基本的な仕組みや運用の目的、導入の際に押さえておくべき重要なポイントについて、わかりやすく解説していきます。企業のオープンイノベーションを担当している方、CVCとの連携に関心があるスタートアップの方は、ぜひ参考にしてください




CVCとは?基本知識とその重要性

CVCに注目が集まる背景

近年、日本国内のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)への関心は高まっています。スタートアップが破壊的イノベーションを牽引する時代において、多くの企業がイノベーション創出の重要な手段としてスタートアップとの連携を重視し、CVCからのスタートアップ投資を通じて、自社の事業変革や成長に乗り出しています。特に、既存の事業モデルの転換を迫られている大企業の動向が注目に値します。

デジタル化や生成AIに象徴されるような経営環境の急激な変化が、自前主義で対応することの限界を突きつけ、外部のイノベーション活用の重要性を一層際立たせています。CVCは単なる投資手段を超えて、企業の持続的な成長を支える戦略的なツールとして、存在感が確実に高まっています。

CVCの基本定義と目的

CVCとは、事業会社が自己資金を活用してスタートアップ企業への投資を行う仕組みです。投資規模は通常1-10億円程度で、出資比率は20%未満が一般的です。革新的な技術やビジネスモデルの学習と取り込みを通じた、既存事業の強化や新規事業の創出を目的としています。

CVCとVCの違い

CVCとVCには投資目的と運用において明確な違いが存在します。

企業が設立するCVCは、自社に対する戦略リターンの還元を目的として、自社の経営戦略との整合性を重視し、投資先との事業シナジー創出を第一の目的に掲げています。長期的な視点に立ち、新技術の獲得や新市場への参入機会として投資を位置づけています。

一方、VCは投資家に対する財務リターンの還元を目的として、ファンド期間内(多くのVCでは10年程度)のExitが求められます。大手VCは年間20-30%のIRR(内部収益率)を目標とし、株式公開(IPO)やM&Aによる、金銭的な投資回収を目指します。

このように、CVCは戦略リターン(事業シナジー)を、VCは財務リターンを重視する異なる役割を担っています。




CVCの運用方法

企業がCVCを通じてイノベーションを実現する具体的な方法について解説します。

投資対象となる企業の選定

CVCによる投資対象の選定において、自社の事業戦略とのシナジーは重要な基準です。将来の成長領域に関連する技術やビジネスモデル、市場シェアの獲得につながる事業領域を持つスタートアップ企業を重点的に評価します。近年の国内CVC投資では、デジタルトランスフォーメーションを加速するAIやDX関連企業への投資が増加傾向にあり、テクノロジーに関連したシナジーの創出を重視する姿勢が顕著になっています。

CVCの設立方法

CVCの設立方法は、自社単独で運営するものと、外部VC等と共同運営するもの(いわゆる二人組合)に大別されます。自社で運営する場合は、戦略リターンの獲得を追求した投資決定ができることが強みである一方、外部VC等との共同運営する場合は、投資ノウハウの活用や運用リスクの分散が可能です。

近年は大手企業を中心に、自社単独でCVCを運営する企業が増えています。これは、自社の経営戦略とより密接に連携したCVC運営を目指す動きによるものといえます。社内に投資専門人材を確保し、より戦略的な投資判断を可能にする体制づくりが進んでいます。

投資後の支援体制

投資後は、投資先との協業を実現させるため、単なる資金提供にとどまらない総合的な支援体制の構築が重要となります。経営ノウハウの提供、販路開拓支援、技術開発協力など、包括的なサポートを展開します。さらに、投資先との協業の進捗のフォローや、自社と投資先の成長戦略のすり合わせにより、シナジー効果の最大化を図ります。こうした体系的な支援を通じて、投資先企業の成長と自社の企業価値向上を実現します。




CVCを活用する事業会社側のメリット

企業がCVCを活用することで得られる具体的なメリットについて、主要な5つの観点から解説します。

オープンイノベーションの促進

事業会社がCVCを通じてスタートアップへ投資することで、そのスタートアップとの連携を通じて革新的な技術やビジネスモデルを効率的に取り入れることが可能となります。

CVCによる投資は、単なる資金提供にとどまらず、投資先との協業を通じて、自社のイノベーション創出を加速させる重要な手段として機能しています。多くの企業が投資先の持つ先進的な技術やノウハウを自社の事業革新に活用し、新たな価値創造へとつなげています。

事業領域の拡大

既存の事業領域を超えた市場への参入機会を、スタートアップ投資を通じて効果的に獲得できます。実際、グローバル製造業のスタートアップ投資の60%以上が、デジタルサービスなど従来の事業領域とは異なる分野で行われており、事業領域の拡大に貢献しています。

投資先企業とのシナジー効果

スタートアップへの投資により、自社の製品やサービスと投資先の革新的な技術を有機的に結合することが可能です。例えば、自社の顧客基盤や販路と、投資先の先進技術を組み合わせることで、新たな価値提供が実現します。

財務的なリターン

戦略リターンに加え、投資先企業の成長に伴う財務リターンも期待できます。投資先企業がIPOやM&Aを実現した場合、投資額を大きく上回る資金回収が可能となり、新たな投資資金として活用できます。実際に、国内の主要CVCファンドでは、複数の投資先企業が株式上場を果たし、投資収益を生み出しています。

新規事業立ち上げのコスト及びリスクの削減

CVCを活用することで、自社での研究開発や事業立ち上げと比較して、大幅なコストとリスクの低減が可能となります。限られたリソースの下で、全方位的に研究開発や事業開発を行うことは現実的でなく、多様な技術開発や市場開拓にかかる初期投資を最小限に抑えながら、新規事業分野への参入を実現できる点が大きな特徴です。



CVCを活用するスタートアップ側のメリット

スタートアップ側がCVCを活用することで得られる価値については、主に以下の5点があげられます。

資金調達および事業成長

CVCからの資金調達は、スタートアップの研究開発や事業拡大を支える強固な基盤となります。加えて事業会社との協業は新たな収益モデルを創出し、持続的な事業成長を実現する原動力となります。

自社ブランドの強化

大手企業からの出資という実績は、スタートアップの信用力と認知度を大きく高めます。特にB2B領域では、こうしたバックグラウンドが取引先との関係構築を加速させる重要な要素と考えられます。

人材獲得の推進

事業会社とのアライアンスは、人材交流や採用機会の拡大をもたらします。業界における存在感の向上は、優秀な人材の獲得に直結し、組織の競争力を一段と高めています。

事業会社が持つ経営資源の有効活用

事業会社の保有する経営ノウハウ、技術基盤、顧客ネットワークといった経営資源の活用は、成長戦略を加速させる原動力です。これにより市場参入の成功確率が格段に向上します。

市場戦略の高度化

事業会社との密接な関係は、業界動向や顧客ニーズへの深い洞察をもたらします。こうした知見の蓄積が、実効性の高い市場戦略の遂行を支えています。




事業会社・スタートアップ双方における注意点

複雑な組織間の関係性から生じる課題について、3つの重要な観点から解説します。

組織内の意思決定プロセスの複雑化

事業会社とスタートアップでは、意思決定のスピードや判断基準が大きく異なります。投資判断や事業提携において、双方の承認プロセスが絡み合うことで、意思決定に時間を要する事態が発生することがあります。

出口戦略(Exit)の課題

スタートアップ投資においては、株式投資を最終的にマネタイズする出口(端的には、IPOまたはM&A)をExitと呼びます。事業会社とスタートアップでは、目的の違いから目指すExitの方向性が異なることが多く、IPOやM&Aの実施において調整が難航するケースがあり得ます。

利益相反のリスク

事業上の競合関係や、情報管理の観点から、投資先との間で利害の衝突が発生する可能性があります。




CVCの成功事例

Google Ventures(GV)の事例

Googleが2009年に設立したGVは、年間投資額が5億ドルを超える世界最大級のCVCです。投資先の代表例としてはSlackやUberがあげられ、ライドシェアのUberへの投資では、Google系自動運転タクシーWaymoの配車を可能にするなど、事業シナジーを生み出すことにも成功しています。

KDDI Open Innovation Fundの事例

KDDIが2012年に設立した「KDDI Open Innovation Fund」は、日本を代表するCVCの一つであり、革新的なスタートアップ企業への投資を通じて、KDDIの強みである通信インフラを活用したサービス向上を実現することで、ユーザーへの価値提供を強化しています。




CVCが支援するスタートアップの特徴

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CVCが投資対象として重視するスタートアップには、3つの本質的な特徴があります。

事業会社の経営戦略との適合が第一の要件です。事業会社のコア技術や事業領域との親和性を持ち、将来的なシナジー効果を生み出せるスタートアップは魅力的です。

経営チームの能力は、第二の重要な要素となります。スタートアップの経営は波乱に満ちており、市場環境の変化に柔軟に対応し、明確なビジョンと強い実行力で持続的な成長を実現できる経営基盤が不可欠です。

事業成長のストーリーが第三の基準です。成長性の高い広大な市場を対象とし、高いシェアの獲得が期待できる独自のビジネスモデルを具備し、企業価値向上への明確な道筋が示されていることが求められます。




CVC設立の際の注意点

1. 明確な戦略の欠如

投資目的と自社の経営戦略の一貫性が重要な基盤となります。投資領域とシナジー創出の方針を明確化し、組織全体で共通認識を形成することが必須です。

2. 長期的視点の重要性

スタートアップとの価値創造には5-10年の時間軸が必要です。短期的な収益追求を避け、継続的な成長支援の体制構築が成功への近道となります。

3. 法規制やリスク管理

スタートアップ投資特有のリスク評価と適切な管理体制の整備が不可欠です。コンプライアンスと情報管理に関する明確なガイドラインの設定が重要な要素となります。




CVCが企業にもたらす未来

市場への影響

CVCの活発化が、スタートアップエコシステムの発展を促進し、イノベーションが盛んになることで市場を活性化します。新たなイノベーションが創出され既存企業に取り込まれていくことで、国や業界全体の競争力向上に繋がります。

企業カルチャーへの影響

スタートアップ企業の革新的な取り組みや、挑戦心あふれるメンバーに触発され、自社従業員が視野を拡げ、イノベーションに肯定的なカルチャーが醸成されることで、企業全体を活性化します。自社従業員が、先進技術やビジネスモデルの獲得に貪欲になることが、未来に渡りグローバル市場での優位性を確立する原動力となります。




ENEOSグループ理念に掲げる「社会の発展と活力のある未来づくり」をオープンイノベーションにより実現するため、ENEOSも2019年にCVCを設立

企業の持続的な成長を加速させる戦略的手段として、CVCの数は増え続け、スタートアップエコシステムにおける存在感はより一層高まっています。

ENEOSグループも、「社会の発展と活力のある未来づくり」という理念をオープンイノベーションにより実現するため、2019年にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立しました。

設立から現在(2025年1月末時点)に至るまで約180億円の出資実績を持ち、現在もスタートアップの皆様と共に未来を創造するべく、オープンイノベーションに取り組んでいます。これまでの活動実績については本ウェブサイト内をご覧ください。

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